Presented by Katura Seto.

 

僕はずっと気になっていた
彼女の髪
肩下まであるストレートの髪を
彼女はしきりに
さわる
なでつける
ときに指にまいて
ひっぱる


外は雨
朝から降り続いている雨は
飽きることなく
空から落ちてくる
真直ぐに直線を描いて
落ちてくる
空の下でそれを見るのが
僕は好きだ

待ち合わせは10時で
彼女はおくれてきた
雨が悪いのっ
ふくれつらの彼女に
僕は困惑する
なんで雨が悪いんだろう
訳がわからない

湿っぽい空気が
僕らの間にわだかまる
彼女は黙り込んだ
ぎゅっと髪をひっぱって
うつむいたきり
飲みかけのコーヒーが
所在なげな僕を映す
雨なんかきらい
僕は顔をあげた
小さな声が
僕の前を通り過ぎる
伏せた彼女の目
テーブルに
一滴の雨

どうしたの
慌てた僕を睨むように
まるで怒ったような
僕はまるで見当がつかない
窓の外に紫陽花が見える
雨に打たれて
揺れる虹

髪が、
ぐしゃぐしゃになるの
小さく彼女は言った
ふくれつらのまま
僕を睨みつけたまま
だから
雨はキライ

そうかな
僕は手を伸ばした
彼女の髪
肩下まである長くて黒い
とてもきれいな髪に
触る
ぜんぜんぐしゃぐしゃじゃないよ
まるで真直ぐに降る雨みたいだ

彼女は
不思議そうに僕を見た
揺れる長い髪に
目眩を覚える
雨が好きなのは
きっと君のせい